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成果の出るマーケティングを阻害する4つの壁と「MCM成熟度モデル」

マーケティング・キャンペーン・マネジメント(MCM)はマーケティング活動をナレッジとして蓄積・再利用し、マーケティング組織の能力を向上させます。AD EBiS Campaign ManagerはMCMプロセスを組織に定着させる仕組みを提供します。

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MCM(マーケティング・キャンペーン・マネジメント)の提唱者であるマーク・ジェフリー氏は、著書『データ・ドリブン・マーケティング』の中で、そのコンセプトやマーケティング活動においてMCMプロセスが果たす役割を様々な観点から説明しています。
ここでは、皆様にMCMへの理解をより深めていただくために、当サイトの「MCMとは?」のページで説明しきれなかった2つの重要なテーマについて解説します。

【1】 成果の出るマーケティングを阻害する4つの壁

ほとんどの企業がMCMを導入できていない

企業における様々なマーケティング活動を、【選択⇒実行⇒効果測定⇒フィードバック】という一連のプロセスに基づいて継続的に管理するのがMCMの考え方です。
ジェフリー氏は米国企業252社への調査を通じて、このMCMプロセスを実践する組織能力を有している企業は、ライバル企業に比べ市場での競争力やカスタマー・エクイティ(顧客資産)など様々な点で優位性が見られると著書で述べています。

MCMが組織の競争力や長期的な顧客価値を高め、マーケティング成果の向上をもたらすと知れば、どの企業もいち早く導入したいと考えるのが道理でしょう。しかしジェフリー氏は、それは簡単でないことを、著書の中でこう記しています。

本調査をしてみて発見したことの中で特に興味深いのは、MCMが業績に大きく影響を与えるにもかかわらず、有効なMCMを導入している企業がほとんどないことだ。なぜだろうか。
この調査での回答から4つの壁が浮き上がっている。
(1)経営陣からのサポートの不足、(2)信頼の不足、(3)部門間協力の不足、(4)スタッフのスキル不足だ。

出典:マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2010年)p.338 ※太字は引用者による強調

このように、彼は企業のMCM導入を妨げる4つの「壁」を具体的に提示しているのです。
以下それぞれについて説明いたします。

①経営陣からのサポートの不足

MCMプロセスが定着しない要因の一つに、経営陣のマーケティングへの理解度の問題があります。
対象企業に最も多く見られたのは、上層部がマーケティングに関する意思決定を、経験や勘に頼ってしまっている傾向です。また、施策の成果を投資効率のみで判断し、中長期の成長や顧客価値創出という観点が抜けている企業も多く、そもそもマーケティング活動が自社に競合優位性をもたらすという認識がない企業もありました。
こうした経営陣のマーケティングへの無理解や軽視により、MCMの取り組みへのサポートが後回しにされ、企業文化として根付かない傾向が強まります。

②信頼の不足

多くの企業では、マーケティング部門と他部門の間で相互尊重が十分に築かれておらず、部門横断での協力体制が弱いことも課題として浮き彫りになっています。その背景には、経営層や他部門の幹部がマーケティング活動の戦略的な価値を正しく理解していないという問題があります。
こうした不信や誤解は、マーケティング部門の発言力や提案力を削ぎ、MCMを推進するための基盤を不安定にします。結果として、せっかくの施策も企業全体の合意を得られず、MCM組織能力の向上を妨げることになるのです。

③現場部門との連携不足

マーケティング部門と現場部門との間で十分な連携が取れていない点も、企業がMCMプロセスを導入できない要因の一つです。
マーケティング・キャンペーンの予算配分に他部門の意見が聞き入れられない、逆に現場部門がマーケティング部門を自社組織の重要なコア部門だと見なしていない、といった状況に調査企業の多くが陥っていました。
こうした部門間の溝が放置されると、MCMの取り組みも断片的な施策にとどまり、全社的な仕組みとしての定着力は失われます。

④スタッフのスキル不足

MCMを導入・実践する上で必要なスキルがスタッフに備わっていないという「壁」もあります。
調査では、約3分の2の企業が「複雑なマーケティング・データを追跡・分析するために必要なスキルを持った従業員を十分に確保できていない」と回答。また、ROIやNPV、CLTVといった財務指標を正しく理解・活用できないケースも多く、マーケティング活動を経営的な言語で語ることが難しい状況に陥りがちです。
このようなスキルギャップは、施策の検証や改善の精度を下げ、MCMに不可欠の「効果測定」「フィードバック」のプロセスが十分に機能しなくなります。その結果、MCMの組織能力の強化も停滞してしまうのです。

MCM導入の「壁」打破は経営陣の協力が必須

こうした様々な「壁」を乗り越えて組織にMCMプロセスを導入・定着させるためには、何が必要でしょうか。

まず「①経営陣からのサポートの不足」について、ジェフリー氏は、そもそもMCMの導入・推進には経営陣やマーケティング上層部の協力なしには成しえないとしています。

MCMは経営陣の共同責任で導入・推進すべきだが、マーケティング幹部はマーケティング・プロセスと指標を決める部分を主体的にリードする必要がある。CMOが成功するには、他部門の経営幹部と協力関係を構築することも必要だ。さらに、新しい業務プロセスや手法を導入するのに伴って発生する変化を、スタッフが積極的に採り入れ対応するように、CMOはスタッフをサポートする必要がある。

出典:マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2010年)p.346~347 ※CMO:最高マーケティング責任者

冒頭でもご説明したように、MCMプロセスの組織能力が高い企業は優れた業績を残していることが分かっています。経営陣や上層部は、MCM導入・実践の達成度は企業の業績に直結するものであると理解した上で、先陣を切ってMCMを推進すると共に、部門間の協力や新しい手法の導入に関わるスタッフを積極的にサポートすべきなのです。4つの「壁」のうち、①②③はいずれも組織体制の在り方から生じる問題ですので、組織のトップが変われば必ず取り除くことができるでしょう。

スタッフのスキルに合わせた段階的なアプローチを

4つ目にあげた「スタッフのスキル不足」という問題については、著書で次のように述べています。

マーケティング・マネジメントを最適化し、最高のMCMを行うためには、スタッフに新しいアプローチ、ツール、テクニック、スキルを習得してもらわなければならない。上層部のサポートとマーケティング・スタッフのスキルに加え、マーケティング・キャンペーンを管理、設計、実行するために洗練されたツールとテクニックを活用することも大切だ。

出典:マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2010年)p.340

スタッフが新しいテクニックやスキルを習得する必要性と共に「マーケティング・キャンペーンを管理、設計、実行するために洗練されたツールとテクニック」の活用が大切だとしています。

例えば、MCMプロセスの最初にあるマーケティング・キャンペーンの「選択(投資判断)」をデータに基づいて行うためには、複雑なデータの収集・分析を行えるCRMやデータマネジメントプラットフォーム(DMP)などの高度なツールが不可欠です。こうしたツールを活用することでMCMを最適化し、組織としてのマーケティング能力を高められます。

一方で、高機能なツールの導入・活用はスキルや資金などの問題もあり簡単ではありません。実際、ジェフリー氏の調査では半数以上の企業がマーケティング・キャンペーンをトラッキング・分析するためのデータベース集約を行っておらず、また約7割の企業がマーケティング・キャンペーンの選択にデータウェアハウスや分析ツールを使用していないという結果が出ています。
いきなり高度なテクノロジーの導入・利用を考えるのでなく、「小さく始めて、小さく成功」の精神で、スタッフのスキルに合わせた段階的なアプローチが必要でしょう。

【2】成熟度モデル

前章の「壁」でご説明したように、MCMプロセスを企業組織に定着させるためには、上層部のMCMやマーケティング活動への理解、社内の関連部門の意思統一、スタッフのスキル向上が不可欠です。
そしてMCMは1度や2度やってみてすぐに定着するものではなく、またいきなり大規模なプロジェクトを実行できるものでもありません。チームとしての目標と計画を設定し、段階的に組織の中でプロセスの最適化を進めていく必要があります。遂行しやすいキャンペーンから徐々に成果を出し、上層部やスタッフがMCMプロセスの有効性を実感できるようになると、組織全体にMCMに取り組む気運が醸成され、部門間の協力も得やすくなるでしょう。

MCMの成熟度を示す三段階のレベル

これからMCMプロセスを取り入れようと考える企業にとって、まず問題になるのは、現時点のデータ・ドリブン・マーケティングへの取り組み度合いがどの程度であるか、自社の立ち位置を正しく把握することではないでしょうか。

これについてジェフリー氏は、当社が行ったインタビューの中でこう話しています。

私たちの調査では、MCMにおいて、組織がどの程度洗練されているかを定義する「成熟度モデル」があることが分かりました。このモデルは3つのレベルに分かれています。

マーク・ジェフリー氏へのインタビューをみる

同氏は組織におけるMCMプロセスの活用・定着度を示す指標として、初級・中級・上級の三段階の「成熟度モデル」を提示しており、著書の中でも詳細に解説しています。
その三段階とはどのようなものなのか、次に見ていきましょう。

MCM組織能力の3つのステージ 成熟度 組織能力 初級 共通の目的・目標 キャンペーン管理の集約化 マーケティング・データベース 中級 個別の目的 確立されたキャンペーン投資を選択するプロセス 成果を測定する指標 キャンペーン終了後での効果測定 データウェアハウス 上級 企業戦略とマーケティングを整合させるスコアカード キャンペーン選択におけるポートフォリオ最適化 積極的なキャンペーンの管理 アジャイル・マーケティング:キャンペーン実行中の効果測定 適応学習およびフィードバック:将来のキャンペーン選択への活用 解析マーケティングおよびCLTV測定 イベント・ドリブン・マーケティング ITインフラ:マーケティング・リソース・マネジメント(MRM)、企業内統合データウェアハウス(EDW)、解析
出典:マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2010年)p.343

初級レベル

初級レベルの組織は、まだMCMの業務プロセスを確立しつつある段階です。
データベースを集約し、キャンペーンの選定や成果の測定・記録は行っているものの、活用は限定的です。過去の成功や失敗から学ぶ姿勢はありますがMCMプロセスが組織文化として十分に根付いてはいません。
この段階の利点は、資産や投資の見方が統一されることで意思決定が明確になり、無駄な支出が減りやすい点です。また、失敗から学びやすい環境が生まれるため、徐々にマーケティング管理能力が高まっていきます。

中級レベル

中級レベルでは、組織におけるMCMプロセスの枠組みがより洗練されています。
データウェアハウス等を活用してマーケティング資産やリソースを統合的に管理できるようになり、管理プロセスも組織化されます。キャンペーン選択の基準も明確化され、ROIなどの財務指標を活用して投資計画や評価に高度な指標を取り入れることで、経営層や財務部門との対話もスムーズになります。
また、データを活用した分析が意思決定に反映されるため、主観だけに頼らない判断が可能です。成果を定期的にレビューし、計画とのズレを早期に発見し、軌道修正できる点も大きな特徴です。

上級レベル

上級レベルの組織では、アクティブデータウェアハウス(ADW)や自動化ソフトウェアなどMCMプロセスを支援するテクノロジーを積極的に活用してキャンペーンやアセットを高度に管理しています。
測定結果をもとにスコアカードやポートフォリオ手法によって投資判断が行われ、最適な施策の選択に生かされるフィードバックループ(適用学習)までプロセスを構築。さらにキャンペーンの実施中もそのパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングし、状況に応じて柔軟に修正できる体制を整えています。
こうした組織には、学習を重視する文化があり、成果データが次の施策に確実に反映されます。その結果、個々の施策だけでなく、全体としての投資効果を最大化し、戦略と整合したマーケティングを実現できるのです。

MCM成熟度を高めるには何が必要?

成熟度モデルの各レベルの水準を整理すると、次のようになります。

  • 初級:キャンペーン成果の測定・記録(活用は限定的)
  • 中級:データの活用・分析による意思決定と管理体制の高度化
  • 上級:データ管理の自動化と柔軟かつ高度な意思決定

この成熟度モデルですが、ジェフリー氏が調査を行った米国企業252社のうち上級レベルに達していたのは全体のわずか11%にとどまっており、半数以上(58%)の企業が初級レベルであったとしています。この結果からも、MCMプロセスを組織に定着させるのは簡単ではないことがうかがわれます。

それでは、企業はMCMの運用能力をどのように高めていけば良いのでしょうか。ジェフリー氏はこう述べています。

成功させるのに最も重要なコツは、焦点を絞り、そこで早期に成功実績を作って信頼を獲得し、成功体験から勢いを得て導入を加速させることだ。

出典:マーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2010年)p.345

いきなり大規模なプロジェクトを成功させようとしても、うまくいくものではありません。それよりも、小さくとも確実性の高い目標に焦点を絞り、【選択⇒実行⇒効果測定⇒フィードバック】というMCMプロセスでマーケティングキャンペーンを実行して結果を出し、その成功実績を上層部に示すことで少しずつ信頼や理解を得られるのです。やがては経営陣も、MCMプロセスの導入を後押ししてくれるでしょう。

MCM組織能力の向上をサポートする「AD EBiS Campaign Manager」

前章の終わりで触れた「小さな成功実績を積み重ねる」という考え方に基づいて、企業のMCM組織能力の向上を目的として開発されたツールが、イルグルム社の「AD EBiS Campaign Manager(アドエビスキャンペーンマネージャー)」です。

AD EBiS Campaign Managerでは、複数のマーケティング施策をデータベース化し、個々の施策を「実行管理」「振り返り補助」「施策立案」の3段階で管理することで、上述のMCM成熟度・初級レベルに該当する「マーケティング・キャンペーンの選定や成果の測定・管理」を簡単かつ効率的に実行できます。
さらにAD EBiS Campaign Managerを広告効果測定プラットフォーム「アドエビス(AD EBiS)」と連携させれば広告運用成果のトラッキングが自動化されると共に、LTV実測などの追加機能により高次元なデータ分析が可能となります。

01 実行管理 選択 実行 02 振り返り補助 効果測定 03 施策立案 フィードバック

日々の業務の中でMCMプロセスを無理なく自然に実践できるAD EBiS Campaign Managerについて、ジェフリー氏は当社のインタビューの中でこう評価しています。

アドエビスキャンペーンマネージャーは、MCMをまさに体現しているプロダクトだと感じました。
私がこのプロダクトを分析して、特に感銘を受けたのは、マーケティング担当者がキャンペーンを簡単に設定・管理できる「ポートフォリオ最適化」へのアプローチが非常にうまく組み込まれている点です。
また、すべてのキャンペーンの詳細なトラッキング機能も素晴らしいです。キャンペーンが機能しているか否かを測定し、その測定データを、次のキャンペーンの「選択」プロセスにフィードバックしているのです。
そして最も重要なのは「適応学習」の仕組みです。アドエビスキャンペーンマネージャーは、AIを活用し、過去の成功・失敗パターンに基づいて、次に選択すべきキャンペーンについて、マーケティング担当者がより良い意思決定を行えるようサポートしている点は素晴らしいと感じました。

MCMプロセスやデータドリブン・マーケティングの導入・推進がうまくいけば、企業の事業戦略とマーケティングの足並みがそろい、必ず企業全体のパフォーマンスや経営の効率性は改善します。MCMの導入には様々な障壁がありますが、「AD EBiS Campaign Manager」の活用が障壁を取り除き、組織的な成果向上の一助になれば幸いです。


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